2006年末に設立された東京のレコード・レーベル。
the nation’s premier label for hushed music – Pitchfork
Flau releases are sonically quite diverse, from acoustic folk to dream pop and complex drum experiments. And though eclectic, never before has a label’s oeuvre come together to so closely sound the way a cherry blossom looks – The FADER
one of the biggest names in the world of really small sounds…the perfect soundtrack to a Sunday evening – Timeout Tokyo
consistently impressive – XLR8R
Flau has associated itself with a signature sound…association with Flau suggests a superior level of pop craftsmanship…What’s remarkable about Fukuzono’s project, which launched at the end of 2006, is that he’s achieved quality control without uniformity – exclaim!
Flau has shown that sometimes silence beats flashiness – METROPOLIS Magazine
flau seem to have a magic touch; everything they put out..has a celestial, positively glowing aura about it that has us longing for more..sonically the label is incredibly diverse, but what its releases share in common are a playful curiosity, an unmatchable quality and a genre-bending commitment to evoking time and space within their sounds – DUMMY
Flau label casts its net across a worldwide community of artists with a particular affection for fragile arrangements and microscopic songwriting…A reliable resource for all the finest, quirkiest exploratory electronic pop music – Boomkat
it combines genuine emotion with a sense of playfulness – Fluid Radio
everyone’s favourite Japanese label and, of course, we make no exception – Going Solo
constantly surprising, consistently stunning – Dummy
un monde de l’infiniment fragile et doux – Ondefixe
one of our favourite labels – Textura
Flau are one of those unassuming labels, which since 2007 have been quietly making their way in the world releasing a diverse range of high quality albums…their roster of international artists blend field recordings, acoustic instruments, microsounds, and voice, in a sound that has become truly synonymous with the label – Furthernoise
worth finding – Foxy Digitalis
grow, pushing boundaries and releasing gems – Drifting, Almost Falling
An inner experience and pure fascination to little things concept and microscopic sounds. FLAU is the latest Label Of The Moment – Otsechka
the Tokyo label’s dreamy and cinematic aesthetic seems tailor-made for two favourite hobbies: idleness and letting the imagination run wild – Solar Flares
This label collects very particular artists from all over the world all under one roof that eclectically holds them together. Each artist is so unique, that you would like to read a whole book about them – PonyDanceClyde
2008-09 London, Cafe OTO
2009-09 Melbourne, Toff In Town
2010-08 Berlin, Altes Finanzamt
2012-05 Malaysia, Black Box Map
2012-05 Macau, LMA
2012-05 China Tour Beijing-Shanghai-Hangzhou
2012-06 Tokyo, Fujimigaoka Church & VACANT
2012-06 Kyoto, Metro
2013-04 London, Cafe OTO
2013-04 Berlin, Antje Øklesund
2013-12 Tokyo, VACANT
2016-03 Tokyo, VACANT
SEE FULL LIST
©FLAU
CAT No. FLAU65
Release Date: April 12th 2017
Format: CD/Digital
ファビオ・カラムルに聞く「アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽」
~『Tom Jobim』のリリースに寄せて~
聞き手:吉本 宏(bar buenos aires / resonance music)
アントニオ・カルロス・ジョビン(人々は親しみを込めて彼をトム・ジョビンと呼ぶ)の音楽はなぜこれほどまでに多くの人の心を惹きつけるのだろう。10年前の2007年の3月、私は彼の音楽に導かれるようにして、リオデジャネイロのアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港に降り立った。それは、ジョビン生誕80周年を記念してリリースされるCDやボサノヴァの映画のパンフレットの取材のためで、なによりもジョビン自身が暮らしたリオの街をこの目で見て確かめてみたかった。初めて訪れるイパネマは、亜熱帯の植物が生い茂る瀟洒な街で、海と湖に挟まれた南北に伸びた通りは海に向かい少しずつその表情を変え、緑にあふれた公園では小鳥がさえずり、街角の気さくなバールでは人々がカフェジーニョを飲みながらサッカーの話題に興じていた。見通しのよい場所からはコルコヴァードの丘のキリスト像が見え、海岸沿いには黒と白の石畳の遊歩道が続く。白い砂浜に降り立つと海風にのって潮しぶきが舞い、波のリズムがボサノヴァのシンコペーションのように感じられた。ジョビンが暮らしたナシメント・シルヴァ街107番地のアパートや、名曲「イパネマの娘」が生まれた、かつてのバー「ヴェローゾ」だった店、晩年の彼が愛したレブロンのレストラン「プラッタフォルマ」などを訪ね、サン・ジョアン・バチスタにある墓に参った。そして、とても印象に残っているのが、イパネマの北にあるホドリゴ・ヂ・フレイタス湖に近いジャルヂン・ボタニコの植物園だった。鳥や植物など自然を愛するジョビンはたびたびここを訪れた。ジョビンはきっとここで植物や鳥たちと会話をしていたのだろう。彼の晩年の作品には自然への想いが特に色濃く表れた。ジョビンの書籍などでも紹介された、植物園の中にあるパルメイラ・インペリアルと呼ばれる大きな椰子の並木道を歩くと、そよぐ風と野鳥のさえずりに誘われて、まるでジョビンの曲が聴こえてくるかのようだった。
2017年4月、ジョビン生誕90周年を記念して、ブラジルから野鳥の歌声に合わせて即興のように演奏をするファビオ・カラムルが初来日する。それに合わせ、ジョビンを敬愛する彼が過去にリリースしたジョビン作品集『Tom Jobim』が再リリースされる。アルバムは、ジョビンの死を悼むように「Choro」(語源は「泣く」)から始まる。悲しさの中にかすかな希望を感じさせるような曲想から、ファビオのジョビンへ対する温かな想いを感じ取ることができる。今回、flauが企画するファビオ・カラムル・コンサート・ツアーの大阪公演を主催させていただくにあたり、ファビオにジョビンの音楽にまつわる話をいくつか伺った。
Q1. あなたの音楽との出会いや、どんな音楽を聴いてきたかを教えてください。ジョビンの音楽にはいつ頃に出会ったのですか?
子供の頃から、私はつねに音楽に囲まれて育ってきました。早くに亡くなった私の母は、アリ・バホーゾやドリヴァル・カイミのような伝統的なブラジルのポピュラー音楽を愛し、よく彼らの音楽を歌ってくれて、私を知らず知らずのうちにピアノの世界へと導いてくれました。私の父は、あらゆる国の音楽をピアノでとてもうまく演奏しました。 60年代から70年代にかけて、ビートルズ〜イタリアのポップミュージック、ブラジルのポピュラー音楽、トム・ジョビン、シコ・ブアルキ、ミルトン・ナシメント、エリス・レジーナなど幅広いジャンルの歌を聞き、その頃ジョビンの音楽に出会いました。クラシック音楽もまた、バッハやドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキー、プーランクのようなフランスの作曲家を中心に、私の人生にいつも寄り添うものでした。その後、私はリチャード・ロジャース、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイの大ファンになりました。
Q2. ジョビンの音楽の魅力とはなんでしょうか? なぜジョビンのカバー集をつくろうと思ったのですか。
私が思うに、ブラジル音楽について語るときジョビンはシンプルに「The best ever」です。彼の”ランゲージ”は、シンプルで本質的で洗練されたものであり、合わせてブラジルの音楽スタイルやジャンルの豊富な多様性(ショーロ、ワルツ、サンバ、ボサノヴァ、サンバカンサォン、トゥダ、バイアォンなど)をトランスレートしています。彼の美しい音楽はピアノによる演奏の大きな可能性を示してくれ、私は、これはとても良い仕事ができるなと気づいたからなのです! 彼は20世紀のフランス音楽やエイトル・ヴィラ=ロボスからの影響がとても強く、私にとって親しみやすいものでした。私の先生であるフレンチ・ブラジリアンのピアニストマグダ・タリアフェホ(1893-1986)は、彼の音楽の真価を知る大きな助けになりました。
Q3.アルバム『Tom Jobim』について教えてください。
この作品は、自分が最も情熱を捧げる2つのもの、つまり「ピアノを演奏すること」そして「最も重要なブラジルの作曲家の傑作を演奏すること」の表現です。私はジョビンの作品に基づいて28曲(ダブルCD)でのアプローチを計画していたので、これを特別な方法で表現することに大きな喜びを感じていました。2枚のCDは、10年の間隔を置いて作られています。最初にDISC1は「Tom Jobim Piano Solo」と名づけられて1997年に1枚のみでリリースしました。この偉大な作曲家が亡くなったこと(1994年)について強いノスタルジーがありました。それは、パーソナルで、控えめで、ジョビンへの敬意を表するトリビュートを作るという私の望みを強く反映しています。一方で、2枚目のCDでは、ほぼ10年後に彼への哀愁を浮かべ、ジョビンとの再会の幸せを感じていました。音楽の精緻化のプロセスを通して、私はほんとうに自分の魂を導く作曲家が私に近づいているような気がしたのです。その時、私はピアニストとしての詩性とジョビンの音楽をより自由に混ぜることができたと思いました。
Q4.あなたが好きなジョビンの曲とその理由を教えてください。
彼はさまざまなジャンルと幅広いスタイルを持っています。私にたくさんのお気に入りがありますが、選ぶのはたやすいですよ。
(1) 彼の最初のワルツ、Valsa sentimental(イマジナ):1945年にジョビンが18歳のときに作曲されたもので、来たるべき未来を予言しているような特別な曲で、フランスの音楽とリオデジャネイロの海風が美しくとけあったデリケートな宝石のような作品です。
(2)Passarim:ブラジルに特別な動物や特別な景観があることを思い起こさせるエコロジカルなアプローチを持っています。
(3)Dindi:50年代のロマンティックな歌です。
(4)Chovendo na roseira:1970年に作曲されたもうひとつのワルツです、エリス・レジーナの歌が忘れらない永遠の名作ですね。
(5)Canta、canta mais – ヴィラ・ロボスの音楽からの影響をはっきりと感じられる美しい曲です。
(6)Chega de saudade -まさに “Bossa Nova”の象徴。
Q5.ジョビンも鳥や動植物を愛していましたが、今回『Eco Música』で鳥の鳴き声に合わせて演奏するというプロジェクトはどのようなものなのでしょうか?
このプロジェクトを創造した時、ジョビンからインスパイアされたことは確かです。『Eco Música』は、動植物が暮らす風景の中にある、彼らの音と私の音楽との間に起こりうる無限の種類の対話にフォーカスしたものなのです。私たちの主なプロジェクトは、自然の中でいくつかのビデオを制作して、私の音楽と多くの壮大な風景やその土地の動物とをつなぐことです。
Q6. お父さまが鳥の絵を描かれたという『Eco Música』のジャケットはどのような経緯で生まれてきたのでしょうか?
残念なことに私の父は、2015年6月に私がこのCDの制作をはじめたばかりのときに亡くなりました。彼は自然の恋人であり、たくさんの景色をタイルに描いていました。だから、彼が鳥の絵を描いたタイルのいくつかをジャケットのために選び、彼に捧げたのは当然のことでした。
ファビオ・カラムルは、小さな頃からブラジルで放送された日本の子供向けのテレビ番組に夢中になり、サンパウロの街に数多くある日本食のレストランなどを通じて自然に日本の食べ物や文化に親しんできたという。そして、彼の心の中にはまだ見ぬ日本の風景があり、個人的にもとても興味をもつ国だと教えてくれた。彼は語る、「私はずっと日本に行くことを夢見てきました。そして、その時がきたのです、ついに!」。彼はジョビンの心とともに初めて訪れる日本での公演を心待ちにしている。
最後に彼は、好きな言葉として、「peace, simplicity, beauty」を挙げてくれた。この3つの言葉は、まさしくジョビンの音楽を見事に表現している言葉ではないだろうか。
2017年4月
Tom Jobim by Fábio Caramuru is the real expression of two of my greatest passions: playing the piano and the masterpieces of one of the most important Brazilian composers. As I planned my approach of the 28 tracks (double CD) based on Jobim’s work, I felt a huge pleasure in exploring this universe in a very particular way: the pianistic one. The two CDs were conceived with a ten year interval between them. The first one, released in 1997, originally named “Tom Jobim Piano Solo”, reminds me of a period when I was strongly nostalgic about the recent departure (1994) of this great composer. It reflects my desire of making a personal, contained and reverential tribute. On the other hand, in the second CD, recorded almost ten years later, the melancholy gave place to a happy sensation of reunion. Throughout the musical elaboration process I really had the feeling of having the composer close to me, guiding my soul. At that time, I dared mixing with more freedom my pianistic poetic and Jobim’s music.
– Fabio Caramuru
01 CHORO
02 MEDITAÇÃO
03 ESPERANÇA PERDIDA
04 CHEGA DE SAUDADE
05 DESAFINADO
06 SE TODOS FOSSEM IGUAIS A VOCÊ
07 SÓ DANÇO SAMBA
08 AMPARO
09 CHOVENDO NA ROSEIRA10 LUIZA
11 QUEBRA-PEDRA
12 EU TE AMO
13 INSENSATEZ
14 ANOS DOURADOS
(DISC2 - CD ONLY)
01 ÁGUA DE BEBER
02 GAROTA DE IPANEMA
03 FALANDO DE AMOR
04 WAVE
05 ESPELHO DAS ÁGUAS
06 SAMBA DE UMA NOTA SÓ
07 DINDI
08 CANTA, CANTA MAIS
09 SABIÁ
10 FLOR DO MATO
11 RETRATO EM BRANCO E PRETO
12 TWO KITES
13 VALSA ROMÂNTICA
14 MODINHA
ジョビン作品の美しいメロディーとハーモニーを高純度で抽出した、きわめてアンビエントなピアノ・ソロ – Latina
今までブラジル音楽に馴染みのなかった人にも、そしてブラジル音楽を飽きるほど聴いてきた人にも聴いて欲しい、そう思わせるアントニオ・カルロス・ジョビン・カヴァー作 – 雨と休日
星の数ほど存在するジョビン・トリビュート盤の中でも、特筆すべき作品のひとつ – Disk Union
まったく色あせない魅力を放ち続けるジョビンにあらためて出会うことのできるエバーグリーンなピアノ・アンビエント集 – 恵文社一乗寺店
…オープンエアに吸い込まれていくような余韻。遠鳴りするようなソロ・ピアノ – 大洋レコード
Fábio Caramuru offers a great chance for fans of Brazilian music to know new angles of the great work of Tom Jobim – Saraiva
CAT No. FLAU65
Release Date: April 12th 2017
Format: CD/Digital
01 CHORO
02 MEDITAÇÃO
03 ESPERANÇA PERDIDA
04 CHEGA DE SAUDADE
05 DESAFINADO
06 SE TODOS FOSSEM IGUAIS A VOCÊ
07 SÓ DANÇO SAMBA
08 AMPARO
09 CHOVENDO NA ROSEIRA10 LUIZA
11 QUEBRA-PEDRA
12 EU TE AMO
13 INSENSATEZ
14 ANOS DOURADOS
(DISC2 - CD ONLY)
01 ÁGUA DE BEBER
02 GAROTA DE IPANEMA
03 FALANDO DE AMOR
04 WAVE
05 ESPELHO DAS ÁGUAS
06 SAMBA DE UMA NOTA SÓ
07 DINDI
08 CANTA, CANTA MAIS
09 SABIÁ
10 FLOR DO MATO
11 RETRATO EM BRANCO E PRETO
12 TWO KITES
13 VALSA ROMÂNTICA
14 MODINHA
ファビオ・カラムルに聞く「アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽」
~『Tom Jobim』のリリースに寄せて~
聞き手:吉本 宏(bar buenos aires / resonance music)
アントニオ・カルロス・ジョビン(人々は親しみを込めて彼をトム・ジョビンと呼ぶ)の音楽はなぜこれほどまでに多くの人の心を惹きつけるのだろう。10年前の2007年の3月、私は彼の音楽に導かれるようにして、リオデジャネイロのアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港に降り立った。それは、ジョビン生誕80周年を記念してリリースされるCDやボサノヴァの映画のパンフレットの取材のためで、なによりもジョビン自身が暮らしたリオの街をこの目で見て確かめてみたかった。初めて訪れるイパネマは、亜熱帯の植物が生い茂る瀟洒な街で、海と湖に挟まれた南北に伸びた通りは海に向かい少しずつその表情を変え、緑にあふれた公園では小鳥がさえずり、街角の気さくなバールでは人々がカフェジーニョを飲みながらサッカーの話題に興じていた。見通しのよい場所からはコルコヴァードの丘のキリスト像が見え、海岸沿いには黒と白の石畳の遊歩道が続く。白い砂浜に降り立つと海風にのって潮しぶきが舞い、波のリズムがボサノヴァのシンコペーションのように感じられた。ジョビンが暮らしたナシメント・シルヴァ街107番地のアパートや、名曲「イパネマの娘」が生まれた、かつてのバー「ヴェローゾ」だった店、晩年の彼が愛したレブロンのレストラン「プラッタフォルマ」などを訪ね、サン・ジョアン・バチスタにある墓に参った。そして、とても印象に残っているのが、イパネマの北にあるホドリゴ・ヂ・フレイタス湖に近いジャルヂン・ボタニコの植物園だった。鳥や植物など自然を愛するジョビンはたびたびここを訪れた。ジョビンはきっとここで植物や鳥たちと会話をしていたのだろう。彼の晩年の作品には自然への想いが特に色濃く表れた。ジョビンの書籍などでも紹介された、植物園の中にあるパルメイラ・インペリアルと呼ばれる大きな椰子の並木道を歩くと、そよぐ風と野鳥のさえずりに誘われて、まるでジョビンの曲が聴こえてくるかのようだった。
2017年4月、ジョビン生誕90周年を記念して、ブラジルから野鳥の歌声に合わせて即興のように演奏をするファビオ・カラムルが初来日する。それに合わせ、ジョビンを敬愛する彼が過去にリリースしたジョビン作品集『Tom Jobim』が再リリースされる。アルバムは、ジョビンの死を悼むように「Choro」(語源は「泣く」)から始まる。悲しさの中にかすかな希望を感じさせるような曲想から、ファビオのジョビンへ対する温かな想いを感じ取ることができる。今回、flauが企画するファビオ・カラムル・コンサート・ツアーの大阪公演を主催させていただくにあたり、ファビオにジョビンの音楽にまつわる話をいくつか伺った。
Q1. あなたの音楽との出会いや、どんな音楽を聴いてきたかを教えてください。ジョビンの音楽にはいつ頃に出会ったのですか?
子供の頃から、私はつねに音楽に囲まれて育ってきました。早くに亡くなった私の母は、アリ・バホーゾやドリヴァル・カイミのような伝統的なブラジルのポピュラー音楽を愛し、よく彼らの音楽を歌ってくれて、私を知らず知らずのうちにピアノの世界へと導いてくれました。私の父は、あらゆる国の音楽をピアノでとてもうまく演奏しました。 60年代から70年代にかけて、ビートルズ〜イタリアのポップミュージック、ブラジルのポピュラー音楽、トム・ジョビン、シコ・ブアルキ、ミルトン・ナシメント、エリス・レジーナなど幅広いジャンルの歌を聞き、その頃ジョビンの音楽に出会いました。クラシック音楽もまた、バッハやドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキー、プーランクのようなフランスの作曲家を中心に、私の人生にいつも寄り添うものでした。その後、私はリチャード・ロジャース、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイの大ファンになりました。
Q2. ジョビンの音楽の魅力とはなんでしょうか? なぜジョビンのカバー集をつくろうと思ったのですか。
私が思うに、ブラジル音楽について語るときジョビンはシンプルに「The best ever」です。彼の”ランゲージ”は、シンプルで本質的で洗練されたものであり、合わせてブラジルの音楽スタイルやジャンルの豊富な多様性(ショーロ、ワルツ、サンバ、ボサノヴァ、サンバカンサォン、トゥダ、バイアォンなど)をトランスレートしています。彼の美しい音楽はピアノによる演奏の大きな可能性を示してくれ、私は、これはとても良い仕事ができるなと気づいたからなのです! 彼は20世紀のフランス音楽やエイトル・ヴィラ=ロボスからの影響がとても強く、私にとって親しみやすいものでした。私の先生であるフレンチ・ブラジリアンのピアニストマグダ・タリアフェホ(1893-1986)は、彼の音楽の真価を知る大きな助けになりました。
Q3.アルバム『Tom Jobim』について教えてください。
この作品は、自分が最も情熱を捧げる2つのもの、つまり「ピアノを演奏すること」そして「最も重要なブラジルの作曲家の傑作を演奏すること」の表現です。私はジョビンの作品に基づいて28曲(ダブルCD)でのアプローチを計画していたので、これを特別な方法で表現することに大きな喜びを感じていました。2枚のCDは、10年の間隔を置いて作られています。最初にDISC1は「Tom Jobim Piano Solo」と名づけられて1997年に1枚のみでリリースしました。この偉大な作曲家が亡くなったこと(1994年)について強いノスタルジーがありました。それは、パーソナルで、控えめで、ジョビンへの敬意を表するトリビュートを作るという私の望みを強く反映しています。一方で、2枚目のCDでは、ほぼ10年後に彼への哀愁を浮かべ、ジョビンとの再会の幸せを感じていました。音楽の精緻化のプロセスを通して、私はほんとうに自分の魂を導く作曲家が私に近づいているような気がしたのです。その時、私はピアニストとしての詩性とジョビンの音楽をより自由に混ぜることができたと思いました。
Q4.あなたが好きなジョビンの曲とその理由を教えてください。
彼はさまざまなジャンルと幅広いスタイルを持っています。私にたくさんのお気に入りがありますが、選ぶのはたやすいですよ。
(1) 彼の最初のワルツ、Valsa sentimental(イマジナ):1945年にジョビンが18歳のときに作曲されたもので、来たるべき未来を予言しているような特別な曲で、フランスの音楽とリオデジャネイロの海風が美しくとけあったデリケートな宝石のような作品です。
(2)Passarim:ブラジルに特別な動物や特別な景観があることを思い起こさせるエコロジカルなアプローチを持っています。
(3)Dindi:50年代のロマンティックな歌です。
(4)Chovendo na roseira:1970年に作曲されたもうひとつのワルツです、エリス・レジーナの歌が忘れらない永遠の名作ですね。
(5)Canta、canta mais – ヴィラ・ロボスの音楽からの影響をはっきりと感じられる美しい曲です。
(6)Chega de saudade -まさに “Bossa Nova”の象徴。
Q5.ジョビンも鳥や動植物を愛していましたが、今回『Eco Música』で鳥の鳴き声に合わせて演奏するというプロジェクトはどのようなものなのでしょうか?
このプロジェクトを創造した時、ジョビンからインスパイアされたことは確かです。『Eco Música』は、動植物が暮らす風景の中にある、彼らの音と私の音楽との間に起こりうる無限の種類の対話にフォーカスしたものなのです。私たちの主なプロジェクトは、自然の中でいくつかのビデオを制作して、私の音楽と多くの壮大な風景やその土地の動物とをつなぐことです。
Q6. お父さまが鳥の絵を描かれたという『Eco Música』のジャケットはどのような経緯で生まれてきたのでしょうか?
残念なことに私の父は、2015年6月に私がこのCDの制作をはじめたばかりのときに亡くなりました。彼は自然の恋人であり、たくさんの景色をタイルに描いていました。だから、彼が鳥の絵を描いたタイルのいくつかをジャケットのために選び、彼に捧げたのは当然のことでした。
ファビオ・カラムルは、小さな頃からブラジルで放送された日本の子供向けのテレビ番組に夢中になり、サンパウロの街に数多くある日本食のレストランなどを通じて自然に日本の食べ物や文化に親しんできたという。そして、彼の心の中にはまだ見ぬ日本の風景があり、個人的にもとても興味をもつ国だと教えてくれた。彼は語る、「私はずっと日本に行くことを夢見てきました。そして、その時がきたのです、ついに!」。彼はジョビンの心とともに初めて訪れる日本での公演を心待ちにしている。
最後に彼は、好きな言葉として、「peace, simplicity, beauty」を挙げてくれた。この3つの言葉は、まさしくジョビンの音楽を見事に表現している言葉ではないだろうか。
2017年4月
Tom Jobim by Fábio Caramuru is the real expression of two of my greatest passions: playing the piano and the masterpieces of one of the most important Brazilian composers. As I planned my approach of the 28 tracks (double CD) based on Jobim’s work, I felt a huge pleasure in exploring this universe in a very particular way: the pianistic one. The two CDs were conceived with a ten year interval between them. The first one, released in 1997, originally named “Tom Jobim Piano Solo”, reminds me of a period when I was strongly nostalgic about the recent departure (1994) of this great composer. It reflects my desire of making a personal, contained and reverential tribute. On the other hand, in the second CD, recorded almost ten years later, the melancholy gave place to a happy sensation of reunion. Throughout the musical elaboration process I really had the feeling of having the composer close to me, guiding my soul. At that time, I dared mixing with more freedom my pianistic poetic and Jobim’s music.
– Fabio Caramuru